留学生の行き来は、双方向・異文化体験重視型へ
10月14日の昆明での東アジアサミット高等教育協力フォーラム、17日の北京での中国教育交流協会主催の国際教育フォーラムに出席して感じるのは、留学生の世界的な動きは、途上国から先進国へという一方向的なものから、双方向で、異文化体験を重視したものに軸足が移りつつあるということです。
北京での国際教育フォーラムについては、中国教育交流協会の章新勝会長は歓迎晩餐会の挨拶で、双方向の交流、異文化体験の重要性を強調していたました。
また、同フォーラムの中の私も出席した国際的な学生の動きに関するシンポジウムでは、私からは、昆明でのと同様の発表をしましたが、British Council は、英国の学生にも異文化を体験させるため、中国との間で高校から院生段階まで様々な双方向交流プログラムを構築していることを発表していました。相手国に応じて、このようにきめの細かいプログラムを開発しているのはひとつの驚きでした。
また、イタリアからは、Uni Italy という在北京の機関の活動として、中国からイタリアに留学した中国人学生が帰国後中国でのemployabilityを高めるため、北京に常駐の学者を置いて留学生を採用するような企業に求める人材像などをインタビューし、とりまとめてイタリアの留学生受入大学に知らせて、教育の参考にしてもらうというのがありました。そういう就職支援策もあったかと、目からうろこでした。
このシンポジウムでは、また、全米公立大学協会副会長のGeorge Mehaffyさんから、国際国際的な学生の動きに関する概観として、興味深い4点の指摘がありました。
第1に、国際的な学生の動きは、様々な要因で変化している。チリ、チェコ、ロシア、グルジアなどこれまで留学生の出入りが全世界的なmassに比べて非常に小さかった国が、受入・派遣国として存在を示すようになった。とはいっても、全世界の留学生の90%はOECD加盟国で学んでいる。学生の動きのパターンは経済の動きの関数でもある。米から中国が増えているのは、中国の経済活動が伸びているからだ。また、豪での留学生への暴行など特有の国での特有の問題が動きのパターンを変える。
第2に、留学生が気にしているのは、コストよりも受ける教育の質だ。これは、British Councilが全世界15万人の留学生を対象に行った調査から明らか。
第3に、親元の大学と留学先の大学との間での単位の互換については、世界の大部分でしっかりしたシステムがまだなく、進歩のないことにはがっかりだ。欧州発のBolognia Processは、ものごとを悪くしただけで、よくしてない。唯一光明があるのは、米国と中国との間で始めているArticulation Accord だ。特定のmajorについて、中国側大学、米側大学それぞれのひとつの学位プログラム間で、単位互換について取り決めるもの。
第4に、国際的な学生の流動に関するデータが不備。初めに、留学生(International Student)の定義すら国によって違う。さらに、一年間で出入りした人数を数えているのか、ある瞬間での人数を勘定しているかの違いなど、様々。国際的な学生の動きに関するデータは、よくても不完全だし、悪くすれば問題なだけ。
発表者ごとに視点がことなり、きわめて質の高い情報量が多いセッションでした。議長を務めた北京大学国際教育研究センターの馬万華所長からは、北京に来る機会があったら、グローバル化時代に日本がどんな大学改革を進めているのか学生に講義してほしいとの依頼を受けました。
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