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2010年12月

2010年12月23日 (木)

夢と情熱で、みんな元気に、外からみて尊敬される日本に

21日、日比谷公会堂での「みんなの夢アワード2010」の最終選考を見に行った。ワタミの渡邉美樹社長が理事長を務めるNPO法人「みんなの夢をかなえる会」が主催。夢に向かって前進するする「夢の途中」の人々を応援するのが趣旨。すでに全国各地でシンポジウムなどを開催してきており、そこにエントリーされた209の夢の中から選ばれた5つの夢を、その夢を持つ5名自らが発表。その中から最もみんなをわくわくさせ、世界を幸せにする夢を「みんなの夢アワード2010」として選出するもの。

5名の中には、バングラのドラゴン桜 税所篤快くんも。ほかは、親孝行に一生かける人 マサキさん、世界中を一つに繋ぐつなぎ人 野口亮太さん、[伝説のホテル]代表取締役 鶴岡秀子さん、世界一夢を与えるマジシャン ナカノ・マクレーンさん。みなさん、はっきりした夢を持ち、明るく、前向き。そして、それを実現しようという桁外れの情熱を感じる。

渡邉美樹さんはじめ5人の審査員の審査の結果、みんなの夢ワワード2010とワタミ特別賞の両方を税所篤快くんが獲得。うれしそうな笑顔が舞台上の大スクリーンに大写しになった。また、バングラの合格生たちもskypeで飛び入り。税所君はじめ、みなさんこれをはずみに夢実現に着実に進んでいってほしい。

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渡邉美樹理事長の講演もあった。自分が24歳から今まで、どんな夢を持ち、どう実現してきたかだ。渡邉社長の夢は、単にこれをなしとげたいだけでなく、「いつまでに」が入っていること。そして最終目標へのマイルストーンも、やはり何をいつまでにと、はっきりさせていることだ。たいへん熱い語りだった。甘いマスクだが、実は、すごい堅い信念の人だ。

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また、感銘を受けたのは、24歳のときに夢を綴った日記の中で、教育制度を改革するという夢も掲げ、現に、平成15年3月には学校法人郁文館の理事長に就任し、平成18年には法人名を学校法人郁文館夢学園に改称し、郁文館グローバル高校を開校。また、公益社団法人SAJ (School Adi Japan)で、「一人でも多くの子どもたちに人間性向上のための教育機会と教育環境を提供する」ことを目的に、カンボジア、ネパールでの130以上の校舎建設などに取組んでおられる。

いま日本全体が閉塞感に覆われていると、マスコミはやたら書き立てる。ますますみんなが塞がる。そうではなくて、こういう夢を実現しようとがんばってる人たちが実はいっぱいいるのだということを、みんなが気づき、そして、ひとりひとりが、夢を持ち、それの実現に向けて情熱をもって邁進していくこと。そうすれば、外からも生き生きとした国に見えるだろう。「夢」と「情熱」、これでみんな元気に、そして、外から見て尊敬される日本になろうう。夢にこだわろう。

2010年12月20日 (月)

九州大学-釜山大学の間ではこんな協力も

18日の九州大学韓国研究センターの10周年記念式典には、釜山大学のPark, Sung-Hoon 副総長(国際協力担当)も来賓の一人として駆けつけてくれた。

Park副総長は、日中韓大学間交流・連携推進委員会の大学間交流プログラム・ワーキンググループのメンバーでもある。10日に北京で開催された第2回日中韓大学間交流・連携推進委員会の会合にも随員として来ていた。そのときに、九大のこの行事にも来ると聞いていた。

Park副総長は記念シンポジウムで基調講演を行い、その中で、すでに釜山大学と九州大学の間で行われている教育の協力について、大変興味深い報告があった。

それは、釜山大-九大の共通科目というもの。

学部では数年前から、釜山大は「韓日関係の挑戦と未来(한일관계의 도전과 미래)」という科目で、九大は「日韓海峡圏の共通課題を考える」という科目で、両校間で教員を入れ替えて教えている。つまり、九大の教員が釜山大に行って釜山大の学生に、釜山大の教員が九大に来て九大の学生に教えるというもの。

大学院では、数学の位相学topologyの科目で、今期から始めたとのこと。

これによって、両大学の教員、学生の双方にいい緊張感が生まれているという。つまり、これに参加する教員は、両校の学生を比べられるし、また、これを受ける学生は両校の教員を比べることができるからだ。

他方、これは一種のチーム・ティーチングであり、当然ながら、参加する両大学の教員の間では、周到な協議・準備が必要だそうだ。そういうことで、この取り組みへの参加を躊躇する教員も多いとのこと。

Park副総長は、
・他の科目にもより広げていきたいが、この2つの科目のアウトカムを慎重に検討したい。
・日中韓のCAMPUS Asiaのパイロットプラグラム、さらには本格展開の重要なベースだと思っている。
と述べていた。

確かに、準備や、実際に同等の質を確保するのは大変だろうが、そのための協議をすることも含めて、教員、学生のグローバル感覚を磨くのにとても有効ではないかと思う。さらに、両校の学生が一同に会して、あるいはwebでつないで同時に授業に参加するなどして、両校の教員がチームになって教えるなどすれば、ますます刺激的な授業ができるのではないだろうか。このような先駆的な取り組みをしている九州大学、釜山大学に賛辞を送りたい。

Park副総長は、また、基調講演の中で、日中韓のCAMPUS Asia 構想のパイロットプログラムに応募するものとして、釜山大学、九州大学、上海交通大学の3校で環境・エネルギー分野の教育協力プロジェクトの検討を進めていることを明らかにした。これもどのような提案が出てくるか楽しみだ。

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中央がPark, Sung-Hoon 釜山大学副総長、左は倉知幸徳 九州大学理事・副学長

2010年12月19日 (日)

九州大学韓国研究センター10周年 松原孝俊教授の情熱とvisionで世界の韓国研究の中心に

18日、九州大学の韓国研究センターの開設10周年記念式典・シンポジウムに出席して、お祝いの挨拶をした。

今でこそ、慶應大学、東京大学にも現代韓国研究センターがあるが、実は、この九州大学に日本で初の韓国研究を専門に行うセンターが2000年に設立された。そのきっかけは、1998年韓国の国務総理であったキム・ジョンピル韓国国務総理(当時)が九州大学の名誉博士学位を受けられる際の特別講演「韓日関係の過去と未来」。その後、韓国国際交流財団からの支援もいただいて、設立・運営されてきた。

さらに、2005年には、UCLA Center for Korean StudiesJohn Duncan教授と協力し、環太平洋の8ヶ国の大学の韓国研究センターのコンソーシアムを立ち上げ、現在では、Oxfordなどヨーロッパの大学も入り、12ヶ国の世界韓国研究コンソーシアムの中心的存在となっている。九州の経済界からも強い支持を受けていて、福岡・釜山フォーラムと協働して地域連携の研究なども行っている。

記念式典・シンポジウムには、世界韓国研究コンソーシアムの議長を務めておられるDancan教授、姜尚中 東大現代韓国研究センター長、小此木政夫 慶應義塾大学現代韓国研究センター長なども参加し、このセンターが国内外の韓国研究のハブとして機能していることを印象付けた。また、福岡・釜山フォーラムの日本側議長を努められる石原進JR九州会長、川崎隆生西日本新聞社長など九州経済界からもハイレベルの出席があり、本センターへの期待の高さも伺わせた。

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九州大学韓国研究センターが、いかに有意義な活動を展開し、世界の韓国研究の中心的拠点になっているかは、Duncan教授が、お祝いの挨拶で端的に語っていた。2004年まで同教授のところには日本の韓国研究者からは全く連絡がなかったが、その年、このセンターの松原孝俊教授などから訪問したいと連絡があり、訪問した松原教授らが語ったのは韓国研究のコンソーシアムvision。アジア太平洋地域の次世代の韓国研究者を集め、連帯のつながりを築くという大変印象的なものだった。翌年Duncan教授は九州大学に客員教授として来訪し、韓国研究センターの質の高さ、教員・学生のコミットメントの強さに感銘を受けた。さらに、世界韓国研究コンソーシアム(第一段階はアジア太平洋地域の8大学のコンソーシアム)の立上げまで協力してしまった。その年には早速コンソーシアムが大学院生対象に第一回のワークショップを開催、参加した若手の間の連帯の絆と友情は今もって脈々と続いている。その後、ヨーロッパの大学も呼び込み12大学の世界コンソーシアムとなった。分野も当初は人文科学中心だったものが、社会科学も大いに入ってきた。大学院生がワークショップに出すペーパーの質もぐんぐん向上、世界の一流大学のPhD級だ。この5年間Duncan教授の学究生活は大変充実していたが、松原教授のvisionと勤勉がなければ、そうはならなかっただろう。九州大学韓国研究センターには、韓国研究の国際化、グローバル化を牽引していってほしい。

松原センター長は、センター設立時から一貫してセンターの専任研究者を努めてきて、本年4月第3代センター長に就任。本日の式典では、センターの次の10年は東アジア共同体の形成に寄与するのを主題として掲げた。シンポジウムも、日韓は東アジア共同体の形成にどう寄与するかということ。

シンポジウムでの議論をまとめると次のようなことでしょうか。
・民主化した韓国は、アジア諸国の中で日本にとっての真のパートナー。東アジア共同体を形成するのは日本だけでやるのでなく、韓国と協力して進めること。
・その際、ASEAN諸国も見ながら進まなければならない。また、日韓両国は米国との関係抜きにはやっていけないが、だからといって、「日韓米」対「中朝」というような新たな冷戦構造を作ってはならない。東アジア共同体は、中国とも、ともに作るという覚悟が必要。
・東アジア共同体は国ベースのものよりは個人ベースのものではないか。国境という線を越えて面的広がりでやっていくもの。まずは日韓両国民が互いに親近感を持つこと。これがなければ共同体はない。日韓関係で一番変わったのは、日本人の韓国に対する意識。学生交流などはさらに意識を変えていくのに有効。

シンポジウムの中で、Duncan教授は、九大に客員教授で来たときに、学生の態度が、大人とは違う開かれた心を持ってたことに感銘を受けたとしていた。さらに、日韓関係の将来は、若者たちにかかっている。彼らを教育する自分たちの役割も考え直さねばと言っていたのが印象的。また、キム・ジョンピル元韓国国務総理は九州大学での特別講演で、若者にこう呼びかけている。「韓日両国の青年は正直な歴史認識の土台の上に、お互いを真に理解し、真の友情と信頼を築いていかねばなりません。」大学間交流は、グローバル人材の育成、大学の国際競争力強化という狙いがあることは事実だし、そのために有効かつ不可欠の方策であるが、それだけでなく、日本と近隣諸国の間の未来志向の、これからを担う若者たちの間の友情と信頼(それがなければ国の間の友好関係もない)を築くというきわめて重要な役割があることを改めて銘記した日でした。

そして何よりも、九州大学韓国研究センターが内外の研究者はもとより地元経済からも高く評価されているのは、一貫してセンター専任で勤めてこられた松原孝俊教授の情熱とコミットメントの賜物だと思う。一層の発展をお祈りします。

2010年12月15日 (水)

日中友好は自分たちの手で 日中合同成人式に邁進する在北京日本人留学生たち

9日、北京大の日本人学生さんと、いくつかの日本の大学の北京事務所の人と懇談。前回10月時にも顔を出してくれた二人と、今回新たに1人来てくれた。

場所は、天安門から西に約1kmくらいかな? 近代的なビルが立ち並ぶ、なんとなく新宿っぽい「西単」という地区の裏路地の胡同にある手羽先焼き屋さん。店の名前は「西单翅酷」。北京に何箇所かあるチェイン店らしいが、ここのが一番人気だとか。

さて、来てくれた学生さんのうちの1人、北京大学で国際関係を勉強する村松文也さん。日本の高校を卒業し、日本で仕事をしてから北京大に入学したそうだ。現在2年生ながら、北京大日本人会会長を努め、おまけに、今年の秋には、彼も含め北京の各大学の日本人留学生代表で、北京日本人留学生社団 Beijing Japanese Students Association 通称ビジャッサを立ち上げた。これは、「北京各大学間を超えたネットワークを構築し、自らの五感で日中の相互理解促進のため、意義のある活動を企画し発信すること」を理念としている。

今回、彼から聞いたのは、来年1月8日に日中合同(「中」には台湾も!)成人式を行うべく奔走しているということ。中国にも成人式はあるが、文化は異なっている。そこで、合同成人式を行い、日中の新成人で相互理解を深めようというもの。また、日本からの留学生は、お正月で一時帰国したにしても、日本での成人式の頃は中国の大学で前期の試験が本格化する頃で中国に戻らなくてはいけなくて、一生に一度の成人式に出られない。それを救ってあげたいという思いもあるとのこと。

村松さんは、学業だけでなく、在北京各国の人たちで野球チームを作って対抗試合をやったりとか、extracarricular activities にモリモリ気持ちよく取り組んでいる。そういうことで、日本人だけでなく中国、各国の企業人などにもネットワークを広げていて、この日中合同成人式への支援集めなどに、授業の合間を縫って「会社訪問」していいる。

中国財界からも、日本留学経験があり支援してくれる人が見つかったとのこと。日本企業からも、現物提供、資金提供など、ご支援してくださる話がついていっているとのこと。また、在北京の日本のマスコミにも報道していただけないか働きかけているとのこと。翌日は大使館広報文化部に支援のお願いに行くと言っていた。

10月に彼らと話したときは、尖閣での問題で地方都市で反日デモが起こり始めていた。かれらは、そういうときだからこそ学生レベルではぶれずに日中友好を進めなくてはいけないと固い決意で、合同文化祭の企画などを進めていた。実際、かれらが学ぶ中国の大学の学生との間は何も問題ないとのこと。むしろ、中国の学生さんはかれらと接して、「本当の日本人がわかった。日本人のよさがわかった」と言うそうだ。

今回も彼らと話して、彼らなりに日中友好を進めようという一種の責務のようなものが感じられ、とても崇高な精神だと思った。また、中国の各界にも彼らを応援してくれる人がいる。日本の中高年の人たち、大学の先生たち、一般論で「今の大学生は...」などと言わずに、こういう学生さんにももっと目を向けようじゃありませんか。また、かれらの努力を応援しましょう。


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「カイシャ維新」を読もう

冨山和彦さんの「カイシャ維新-変革期の資本主義の教科書-」、読んでみました。黒川清先生が、「ビジネスの人たちはMustだが、役所も、政治も、どこも人でも読むべし、お勧め。ごたごた言わないで読む、本質だから。」と推薦を通り越して指示のようなことをTwitterに書かれていた。

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読んでみて、これまでそうじゃないかなぁと思ってたことがいくつか確信になり、あるいは、そういうことについてハッキリした見方を与えられた。もっぱら第5章に書いてあることが多いが、いくつかあげると以下の通り。黒川先生が「本質だから」とおっしゃってた意味がよくわかりました。

なお、第5章は、2008年7月のいわゆる新前川レポート、経済財政諮問会議の「構造変化と日本経済」専門調査会報告「グローバル経済に生きる-日本経済の『若返り』を-」がベースになっていると著者は言っているが、同報告よりはるかに、主張がくっきり、はっきりしている。

いくつか引用させていただくと、

・規制強化により、国内での雇用形態には、事実上、正規雇用という、人件費を長期固定化、硬直化する選択肢しかなくなりつつある。当然、企業としては、設備投資は海外に、働き手もできるだけ海外で雇う方向にインセンティブ付けされる。国内では、既存の正社員の残業増でなんとかしのぎ(したがって正社員の所得は増加する)、新卒の採用は自然減を補う範囲にできるだけ抑えるという現象がおきるのだ。だから失業率は高止まりしたまま。09年度の新卒求人状況は90年代の就職氷河期を上回る最悪なものだったが、景気回復期の今年もほぼ同様の水準。カイシャモデルの延命弥縫策によって、私たちはまたぞろロストジェネレーションの再生産に向かっている。

・才能に恵まれ野心のある日本の若者が、青天井で世界の頂点に登っていくことを思い切り促していく必要がある。そこでは何より、トップクラスの大学、おそらくは高校の一部について、大改革を行うことは必須である。ポイントはこれらの教育機関を世界のフィールド、少なくともアジアにおける知的オリンピックが常時開催されている場所にすることである。...日本の一流高校や大学が、アジアはもちろん、世界のトップの学力レベルの若者が集まり、共に学び、競い、語り合う場所にすることに、国家国民を挙げて取り組むべきだ。

・現状、日本における教育に対する公的補助の対GDP比率は、OECD諸国の中で最低水準である。あえてリスクを取っていえば、中高年、高齢者のために使う税金と、未来ある子供たちや若者のために使う税金と、どちらが大切か。そのことを中高年世代が真剣に考えたとき、おそらく答えは自明のはずだ。本気になれば金はあるのだ。

・国際的な経験が豊富は、したがって少し飛んでる日本人たちが、過去において必ずしもハッピーな人生を送っていない事実。そういった人々が、内なる見えない壁に阻まれる姿を見てきた親の世代や、その子供たちである若者たちは、ますます狭くなるカイシャの正社員枠にはいるべく、必死にムラ内の空気を読んで、内向き指向で小さくまとまった日本的優等生を目指している。若い時代に海外で過ごす1年、2年は、時間の無駄だけでなく、「変な日本人」になる分、百害あって一利なしだと思っているのだ。


その他、日本の経済を回すにはどうするか、今求められる、リーダーシップ、知的良心とは何か、国際標準化は自国有利にもっていく戦いであることなど、その通りと納得できることが多かった。

どんなセクターでも、これからは何を心得て諸事に臨まなければならないか、考えさせられます。

みなさんも是非読まれることをお奨めします。


2010年12月12日 (日)

日中韓3国で新たな大学間交流、来年から開始で合意

10日、日本、中国、韓国の3カ国の間で、単位の互換などをきちんと織り込んだ、アジア世界に通用する人材を協働で育てる教育プログラムを展開していこうという構想を進める、政府レベルの第二回の会議が北京で開かれました。来年できるだけ早くパイロットプログラムを開始しようと合意したのが大きな収穫。会議結果のプレス発表はこちら

この会議のメンバーは、大学、産業界、大学教育の質保証機関のハイレベルの人からなっていて、日本はといえば、

安西 祐一郎 文科省参与、慶應義塾学事顧問(前塾長)、中教審大学分科会長が共同議長、他に、
濱田 純一 東大総長
寺嶋 実郎 日本総合研究所会長、多摩大学学長
中鉢 良治 ソニー副会長
平野 眞一 大学評価・学位授与機構長
磯田 文雄 文科省高等教育局長がメンバー

この構想は、もともと鳩山由紀夫前総理が昨年の日中韓サミットで提案したもの。中国、韓国からも歓迎され、ことしの4月には東京で第一回の会議が開かれ、CAMPUS Asia という構想が立ち上がった。レセプションには鳩山総理もお見えくださり、3カ国の学生に囲まれて挨拶いただき、また、乾杯後は、かれらとじっくり歓談していただけた。

第一回の会議の後、8月には東京で作業部会の会合を開き、来年にはパイロットプラグラムを開始することを念頭にでガイドラインの案などを検討して、このたび第二回の会議となったもの。

今回の会議では、ガイドライン案が大筋で認められるとともに、とにかく来年できるだけ早く、パイロットプログラムにとりかかろうと合意できたのが大きな成果だ。

会議の中での発言として、

・世界の動きは速い。とにかくパイロットプラグに早くとりかかり、やりながら改善・拡張しよう。

・パイロットプログラムの開始は、アジアも高等教育の人材育成に世界的リーダーシップをとるとかかげていく出発点だ。

・産業界とも連携して、出口戦略を明らかにして取り組んでいこう。

・日中韓3国が高等教育で本気で連携すれば、世界の課題の大部分を解決できる。アジアをリードし、世界をリードできる人材を育てていこう。

・日中韓で比較優位にある分野で連携してt、さらに国際的に強くしていこう。

など、前向きの意見がどっさりでした。(うれしい、うれしい)

この会議いいのは、へんな駆け引きとかなくて、本当に3国とも、大学の国際競争が急速に進んでおり、なにか始めないとアジアの大学が埋没していってしまうという危機感、あるいは、アジア、とりわけ日中韓3国の大学はその気になって連携すればもっと国際的にやれるはずだという強い期待をもって、各国委員が、素直にいいアイデアはとりいれていきましょうという気持ちで臨んでおられること。

会議後の中国教育部主催のディナーは、和気藹々、お互いのご苦労を本心で褒め称えあう、飾ったところのない、いい雰囲気でした。私は、中国側メンバーの一人、北大方正集団総裁の張兆東さんと白酒(コウリャンが原料の蒸留酒。アルコール度50度以上でした。)でカンペイ!の連続。
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4月に東京で第一回会議やったときに、飲兵衛は本能的に類を察するようで、そのときは、日本酒でカンペイ連続でした。今回も会場でお互いを見かけるなり、握手+hugで再開を喜んだのでありあました。

北京大学教育学院で、日本の大学改革について講演

9日、北京大学の教育学院で日本の大学改革について講演。ここの高等教育研究センターの馬万華 Ma Wnahua 所長からの依頼に応えたもの。馬センター長とは、10月の中国国際教育交流協会のEducation ExpoでのForum の International Students Mobolity に関するセッションでご一緒。

聞いてくれたのは、馬センター長の仲間の教員や院生のひとたち。日本の大学に短期間研究に行ってたことがあるという人も多かった。

日本の大学改革の話をするにあたっては、まず、日本の大学システムについてのfactから、説明に入るようにした。規模感、国公私の比率(大学数、学生数)、収入構造、国立大学法人化(特に第一期が終わっての検証結果、私立大学の経営状態など。その上で、機能分化、体系的教育、質保証、情報公開、国際化の5つのテーマで改革状況、今後の課題を説明。最後に学生の状況(経済的、就職)にも触れた。<講演資料はこちら>

資料の最後には、9月の日ロ学長会議で濱口名古屋大総長が行った基調講演に入っていた、Go Yoshida先生作成の" The World's Trends in Higher Education"も付けた。馬センター長はじめ皆さんから、「本当にその通りだ」と、大変高く評価されてました。

質疑を含めて、予定を30分以上上回る講演でした。皆さんの関心事としては、
・国立大学が法人化してどう変わったか

・最近の予算削減などで、教員の構成がどう変化しているか。有期雇用の教員が増えるとじっくりした研究をやらなくならないか。若手教員にばかり負荷がかかっていないか。

・自民党から民主党に政権が変わって自民党時代に始まったイニシアチブ(留学生30万人計画、Global 30など)は影響を受けていないか

・大学の情報公開は最近の政府系の情報公開一般に比べてどうか

・日本の大学は海外大学とのjoint vebtureにはどんな方針なのか
などでした。

就職に関しては、この春の最終内定率91.8%は就職氷河期以来2番目に悪いことも紹介したが、中国の68%に比べて、「そんなにいいの?」という反応でした。

今度は、中国からも誰か来て、大学をとりまく全体像の話をしてくれるとよいと思う。大学間交流をやっていく上では、質保証については最低でも必要だし、やはり大学を取り巻く全体像について相互理解深めておくことは重要だと思う。

聞いてくれた人の中には、馬センター長との研究仲間で、オーストラリアのメルボルン大学高等教育研究センター(Centre for the Study of Higher Education) のsimon Mariginson 教授もいらっしゃた。東大にもちょうど法人化の2004年に短期滞在したことあるとのんこと。最近は東アジアの大学を訪問して状況把握しているそうで、講演前に短時間お話したが、東アジア各国の高等教育・大学の状況を、それぞれone sentenseくらいでクリアーに性格づけしているのには驚いた。特に、ある国では、大学が非常な財政難で教員もろくに給与をもらえず、2-3件の兼職をしないと暮らしていけない状態で、惨憺たるものだとの話があった。そういうことは政府の行政官と話していても出てこない。こういう人を情報源に持つことも大事だ。


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2010年12月 5日 (日)

学位プログラム単位の評価に取り組む東アジアの大学

11月24日、ASEAN+3教育関係高級事務レベル会合の前日、AUN (ASEAN University Network) Nantana事務局長を往訪し、AUNの最近の質保証に関する活動について意見交換。

Nantana事務局長、リンクの写真はキリッとした感じですが、物腰柔らかな方です。タイのチュラロンコン大学の生物系の先生で、現在は週の半分までということでAUN事務局長職にあるそうです。したがって、大学では授業ももち、また自分の研究室の院生の論文指導もしなくちゃいけないけど、AUN事務局長の仕事は半分のワークロードじゃ終わらないと、嬉しい悲鳴をあげてました。

以下のことが興味深かったです。

・AUNでは、2004年にQA guideline、2006年にQA Manualを作った。これには、JAIF(日本・ASEAN統合基金)からの支援を使っている。これらは、学位プログラム単位での評価を行うためのもの。評価の際に使う記入票や、質問例なども入ったもの。内容については、作成時は、欧州からの指導を得た。

・このマニュアルは英語で作ったが、その後、それぞれ申し出により、中国語訳、ベトナム語訳が作られている。中国語訳作成は雲南大学ががんばった。

・同マニュアルに基づいて、2007年から学位プログラム単位で実際の評価を行ってきている。これはAUN加盟大学の特定の学位プログラムを対象としたもので、評価を受ける大学からの自発的申し出によって行う。(1大学あたり数プログラム程度)

・評価者としては加盟大学からの25人の評価者のプールを作っている、その中から適宜選び出して、個別具体の評価に当たっている。25人のうち7人はseniorで、欧州との間で評価での協働なども日常的に行っている人。

・これまでに13大学で評価を行った。最近行っている評価では、職業(資格)との関係が近い学位プログラムに重点を置いている。たとえば、工学、経済、経営など。例えば、2010年10月にインドネシア大学で行った評価では、建築、電子工学、化学工学、冶金・金属工学の4プログラムについてについて。2009年12月にベトナム国家大学ホーチミンシティ校で行った評価では、コンピューター科学・工学、情報技術、エレクトロニクス・通信の3つのプログラムについて。2009年10月にインドネシア ガジャマダ大学で行った評価では、薬理科学、化学、医学教育について。評価者は他の国の大学から。

・学位プログラム単位での評価については、今後、評価のやり方などが国際的に見てどうかのベンチマークを行っていく。このため、来年からDAADドイツ学術交流会と協力を開始する。

・QA guideline, manualの初版は欧州に学んだものであるが、これまで行った評価からの教訓などを反映すべく、改訂していく。

・学位プログラム単位での評価に加えて、大学全体についての評価(institutinal assessment)もやれるようにしていく。これに関しては、欧州ではEuropean University Associationが取り組んでいる。同associationは欧州の500以上の大学からなるもの。institutional assessmentには、元学長級の評価者でやっているらしい。

・評価に関しては、他に、評価者の訓練を行っている。比較的進んでいる国の評価者が、遅れている国に出かけていって指導する。 (日本の評価者も参加させてもらえるか聞いたところ、大歓迎とのこと)

・評価は何について行うかといえば、単純で、教育の質が改善されているかだ。

と、まぁ、こういうことで、まずは、いくつかの学位プログラムについて試行しながら、マニュアルなどの有効性も確認し、人材も育てながら、学位プログラム単位の評価をきちんとやれるようにしていってる。そもそもAUN加盟大学はASEAN各国の旗艦級大学だし、評価しているのも1大学あたり数プログラムだから、ASEAN全体での学位プログラム数から見ればほんの一部だろうが、しっかりやろうとしていることには脱帽。

日本では、従来から各大学は自己点検・評価をその結果を公表するよう求められいたが、2004年からはそれに加えて、各大学・短大・高専は7年に1度、文科省から認証された機関(現在4機関が認証されています。)から評価を受けその結果を公表することとなっている。

2004年から始まった認証機関による評価は今年度で第1サイクルが終了。そのような状況で、11月29日の中教審 大学分科会 質保証部会では、4つの認証機関からこれまでと今後の課題についてヒアリングし、ディスカッションを行った。その中で複数の委員から学位プログラムについての評価の必要性が指摘された。

これは実は、大変重要な一歩。というのは、これまでの認証機関による評価は大学全体についてのものであったが、これから東アジア地域で大学間交流、とくに単位互換を含む交換留学、ダブルディグリーなどを行っていくようになると、送り出し側、受け入れ側の学位プログラムの質がかならず問われます。東南アジアでは試行ではあれ学位プログラム単位の評価が進んでいるのに、日本ではほとんど議論の俎上にすら上がらず、いいのかなぁと心配していたからだ。

今年6月にインドネシア大学を訪問し質保証活動についてディスカッションした際、先方の説明はまず「学位プログラムがいくつあります」というところから始まり、ガツーンとショックを受けたものでした。また、インドネシアの質保証機関BAN-PTでは、すごい勢いで学位プログラム単位の評価を行っていこうとしていた。

これから学位プログラム単位の評価に取り組んでいくには、東アジアの大学でどうやっているのか、日本の評価者も現地に学びに行くといいと思う。

AUNの質保証関連活動については、AUNのAnnual Report 2009-10(18ページから20ページ)にわかりやすく書かれている。とにかくこのAnnual Reportは出色の出来です。質保証のところだけでなく、全体を是非ご覧になることお勧め。

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