Going Global 2011 で、日本の高等教育の国際化をプレゼン
3月11-12日香港で開催されたBritish Council 主催の Going Global 2011 に参加しました。
Going Global は、高等教育について2年に一度の国際会議で、今回5回目。従来はロンドンで開催されていたのが、その名の通り、今回は初めて英国の外に出て香港で開催されたというものです。
70の国・地域から1000人以上が参加。その中には15人の大臣・副大臣もいらっしゃいました。
今回のGoing Globalに合わせて、British CouncilJapanでは、日英の大学間での新しい連携・協力のあり方を探る会議を企画されて、上司の方にそれに出てもらえないかという話がまずありました。重要ではあるが国会中であるので、私が代わりに遣わされることになりました。そちらはclosedな会議です。
一方、Going Global 2011 には世界中から高等教育関係者が集まるのなら、日本の取り組みもアピールしたいですが、どうしたらいいかな? いろんなセッションを聞きに行って真っ先に質問とかコメントする(その中で日本の取り組みをアピール)ことかななどと思いながら、British Council Japanのスタッフに相談しました。2-3日のうちに、「高等教育の国際化への国としてのアプローチ」というセッションで発表してくれないかという話をいただき、即、お受けしました。
セッションは1時間。私を含めてスピーカーは3人。一人12分のプレゼン。その中で、何を伝えるか。
まずは、この数年で政策がrichになってきたこと。海外から活力を導入するという大きなパッケージの中で留学生30万人計画、その拠点整備としてのGlobal-30が出てきた。次はアジアでの質保証を伴った交流という、より具体的な重点。そして、経済活動などがグローバル化していく中で、日本人学生ももっと海外に出るようにしてグローバル化時代の人材の素養を身につけるようにする。
そして、こうなった姿というのは、いまや世界の大学間学生交流運の大きな潮流に乗ったものであるということ。昨年秋くらいからいろいろな会議に出て感じていることは、世界規模での留学生の動きというのは、昔ながらの一方的な流れ、つまり、十分なキャパシティがない途上国から先進国に学びに行くという流れではなくなっています。いわゆる途上国であっても相当程度自前で高等教育需要(少なくとも学部段階)をまかなえるようになってきた国では、むしろ母国の大学に籍を置く学生を一定期間海外の大学に送り、異文化を体験させることを主にした交流をさせたがっています。また、先進国の大学でも、学生に、地球上のさまざまな状況に目を開かせ、異文化受容性などを身に付けさせるために、これまであまり留学先になっていなかったようなところに、やはり交流型で送りたいという、「双方向、異文化体験重視型」の学生交流が主流になっていこうとしているということです。
その際は、単位互換や、いわゆるダブルディグリー、ジョイントディグリーなどを織り込んで、異国での学ぶが正当に評価され、不利にならないようにしないといけない。これには、交流先との間で、教育の質保証について、相互理解し、単位互換などを行う枠組みを作ることが前提。制度も違う国の高等教育機関同士の間の話だから容易ではないが、お互いの制度の説明から始めてやっていかねばならない。
そして、なぜ、異文化体験が大事か。世界がグローバル化すると、ビジネスの世界では当然だし、地球的課題の解決に取り組んでいく公的あるいはNGO的な活動でも、文化的背景の異なる仲間との協働はあたりまえのことになってくるし、むしろ、多文化環境から新しい発想、価値が生まれるからです。グローバル化時代の大学の社会的責務には、異文化の仲間と協働できるように若者を育てることがあると思うのです。
文化的にはかなりhomogeneousな中で育ってきた日本の若者には、できるだけ多くが異文化との触れ合いを経験できるよう、相当意識して仕組まねばなりません。
さらにここまで来ると、巷間言われる日本の若者の「内向き志向」に触れないわけにはいきません。英語に自信がない、就活とぶつかるなどという事情はあります。そう言っても彼らのマインドセットの問題もないことはないでしょう。しかし、そのマインドセットは「失われた20年」の副産物ではないでしょうか。一方で、バングラのドラゴン桜、早稲田の税所篤快さんのようなとんがった積極的な若者もいるのです。若者は内向きだと批判しているだけではなんの解決にもなりません。
このようなことを言おうとして作った原稿は、読み上げてみると20分以上かかってしまいました。今回の出張中、空き時間を使ってどんどん枝葉を削りました。パワポはこちらです。
そのセッションでは、他に、香港教育庁のMichelle Li次官、ケニアにあるUnited States International University のDoreen Alusa 講師が発表し、British Council Honk Kong でglobal education を担当しているJanet Ilieva さんがchairでした。会場に行ってみたら、4人のうち男性は私だけ。Li次官は、交換留学で上智大学に来ていた経験がおありでした。
Li 次官の発表は、香港をいかにさまざまな国からの留学生にとって魅力的にするかという具体的な取り組みが主体でした。積極的なリクルート、在留資格の合理化から始まり、キャンパスの国際化、卒業後の就職支援(在留期間延長を含めて)、香港ならではの多文化体験などなどです。もともと国際性のある香港でも、日本の留学生30万人計画と同じようなことを、ここまでやっているんだなという印象でした。パワポも洗練されてました。
ケニアのAlusa さんの発表では、ケニアでは大学進学率が僅か3%、海外の大学との交流は始めつつある(広島大学はやってます)、質の悪い交流にならないよう、実質的な質保証や、きちんとした取り決めの締結などに相当気を遣っていることが印象的。とくに、最後に、10%にも満たない進学率を少しでも高めるためにも外国の大学との連携は重要と締めくくっておられたのは、アジアでの交流は第一プライオリティかもしれないが、そういう現実にも目を向け、日本が、あるいはアジアで連携して、あるいは、欧米と連携して何ができるかを常々考えていかねばと思いました。
質疑の中では、日本からの参加者からも積極的に質問がありました。国際化を進めるには大学の教職員も変わらねばならないが具体的にどうしているのかという、香港の次官への質問でしたが、Chairが「私も何か言うか?」と囁いたので、普段から思ってる、
・教職員のマインドセット、態度を変えることが必要で、本当に国際化が進んだかは外国人学生数が増えたかというようなsuperficialな指標ではなく、マインドセット、態度が変わったかで見ないといけないと思う。Global-30の中間評価でもそこが大事だと自分は思う。
・ただ、マインドセット、態度を変えるのは簡単でない。いろいろなやりかたがある。だからこそ、いろんな国での取り組みのGood Practice やlessons learned を交換しあうことは意味あることだ
とお答えしました。
このこのセッションは、今回のGoing Global の中で2番目に人気が高かったということです。セッション終了後も何人かの方から「ぶらさがり」があり、さっそく今後の情報交換についてメールを送ってきた人もいます。日本のプレゼンスを示すということはなんとか果たせたかと思います。これから本当に重要なのは、つねにあちこちとディスカッションして、他の国のやり方に学ぶべきは学びつつ、日本の国際化戦略、プログラムをより洗練させていくことだと思います。
なお、今回のGoing Global 2011 のスピーチ、プレゼンは、Policy Review TV で見られます。Going Global 2011 全体についての目録はこちら、私のプレゼンについてはこちら。落ち着きがない話し方です。もっと場数踏まなければ。
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コメント
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加藤さん
ダッカから税所篤快です。
カンファレンスでの紹介ありがとうございます。
もっともっと積極的に前のめりにいきたいと思います。
応援よろしくお願いします。
投稿: 税所篤快 | 2011年3月15日 (火) 14時26分